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いわゆる逸脱酵素
白血病の血中酵素異常として特に診断的意義をもっているのは解糖系酵素lactic dehydrogenase(LDH),aldolase(ALD)およびphosphohexoseisomerase(PHI)である.好中球系細胞は正常であるか白血病であるかを問わず,解糖が盛んであることが第1の理由であり,これらはいわゆる逸脱酵素であり,白血病のように腫瘍細胞が血中を循環している状態ではこれらの酵素が血中の幼若細胞から直接逸脱することがわかっていることが第2の根拠であって,白血病診断上の一つの生化学的診断法ということができよう.もちろん,これらの酵素は種々の組織細胞から血中に逸脱して血中ではそれらの合計となっているわけであるが,白血病では白血病細胞から逸脱するものが断然他を圧し,高い血中酵素活性を示すことが多い.特にLDHには5つのisoenzymeがあり,その配列(zymogramという)によって細胞由来,その細胞の幼若老熟もわかるので,疾患の診断に役立つことが多い.
癌においては一般にこれらの酵素が血中に著しく上昇することが多いが,もし白血病が強く疑われる場合,著しい上昇が証明されたら,骨髄性白血病,特に急性骨髄性自血病(AML)である.中等度の上昇は急性リンパ性白血病(ALL)でもあり得るし,単球性白血病(MoL),慢性骨髄性白血病(CML)でもあり得る.白血病であるのにこれら酵素活性が正常域にあるのは非白血性の急性白血病(血中に芽球が少数しか出ないもの)か慢性リンパ性白血病(CLL)である.すなわち,これらの解糖系逸脱酵素が血中(血漿)に極めて高いときはほぼ確実にAMLと診断できるが,中等度の上昇の場合には白血病細胞のLDH isoenzyme pattern(zymogram)をしらべなくてはならない(後述).血中白血球数をしらべて極めて多い(数万以上)のに血中のこれら解糖系逸脱酵素の活性が正常域にある場合はCLLである.このように血液の白血球数がしらべてあれば,白血球数が極めて多いのに血中のこれら活性の上昇が中等度にすぎないのはCMLである(図1).
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