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基礎医学と臨床医学
塚田 裕三
1
1慶大生理学
pp.716-717
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204103
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最近の大学医学部や医科大学は臨床医の養成機関としての性格がとみに強まった.それには卒後の臨床研修までを大学病院がしょい込んでいる現状とも関連しているのであろう.この反面基礎医学に対する関心は極度にうすれ,これを志す卒業生もめっきり減って慶応では昭和46年度より零.東大でも昭和47年度は零になると報じられている.このような現象は修業後の経済的な背景が臨床と基礎とで余りにも大きなへだたりがあることが大きな理由であろうが大学院制度や専門医制度に影響されている点も見逃がすことはできない.
この対策として数年来基礎医学振興策が各方面で論ぜられたが実効はほとんど上っておらず,医学の将来にとって重大事となっている.基礎医学の衰退は基礎医学そのものよりも臨床医学の将来に与える影響がより重大であることが懸念される.基礎医学振興を叫ばねばならないのは基礎医学者よりも医療にたずさわっている臨床医家の方でなければならないのだと思う.
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