巻頭言
臨床医学と基礎医学
田坂 定孝
1
1東京大学
pp.389
発行日 1957年6月15日
Published Date 1957/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200502
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臨床医学と基礎医学という2つのものを,いかに結びつけるべきかということは,すでに古くから論議されてきた問題であるが,私はこのたび欧米諸国の諸大学,研究所に於ける各方面の研究状況の実態を観察することによつて,この問題は今日なお新らしい問題であるという信念を深めるにいたつた。
一体医学というものは,人体を対象とし,しかもそれが疾病によつて種々なる変化を生ずる過程を取り扱うのが本筋であり,その意味で,生物学の対象とする人間と,必ずしも一致しない点を持つのも止むを得ない。いなむしろ当然そのような一面を持つべきであろう。このことは,すべての医学の分野に共通すべきことであるが,従来やゝもすると,基礎医学は臨床医学の基礎をなすものであり,臨床医学はその基盤の上にたつて存在すると漠然と考える傾向があつたが,これは用語のあいまいさによるもので,この両者は上下というような関係ではなくて,単に分化の方面や程度の差に帰せらるべきものであろう。
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