卷頭言
「基礎医学振興」について
中井 準之助
1
1東京大学
pp.205
発行日 1966年10月15日
Published Date 1966/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902693
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基礎医学を振興させるためには多くの問題を根本的に解決しなければならない。考えてみれば,それは基礎医学だけでなく,一応隆盛をきわめているかに見える臨床医学にも当てはまることであり,日本の科学すべてが,本気で振興を考えなければならぬ底の浅さを露呈していることに気づく。
いまは,しかし,問題を基礎医学に絞り,さらに専攻者の確保と,テクニシアンの問題だけとしたい。「振興」を叫ばれた先輩方は,かつて旧制学位論文のための,経済的にも将来のポジションについても指導者をわずらわさずに済んだ夥しい研究者に恵まれた最後の教授達であり,それゆえに新制度が生んだ変化が一種の危機感を呼んだとも解釈される。正確に調べれば,おそらく昔も今も医学科出身の基礎医学専攻者は数において大きな差はないのではないか。
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