症例
病因考察に役立った全身性硬化症の一症例
長田 尚
1
,
柏崎 禎夫
2
,
本間 光夫
3
1慶大内科
2北里大内科
3慶大内科
pp.66-70
発行日 1972年1月10日
Published Date 1972/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203969
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はじめに
今日一般に使用されている強皮症Sclerodermaという名称をはじめて用いたのは,1847年Gin-tracであった.しかし本症の最初の記載はもっと古く,18世紀の半ばでCurzloであるといわれている.以後本症が皮膚のみならず全身の内臓臓器をも侵し,経過がしばしば進行性であることがだんだん明らかにされるようになり,1945年Goetzは本症を全身性進行性硬化症"Progressive syste-mic sclerosis"と呼ぶことを提唱した.しかし,最近の英語でかかれた文献では,むしろ,冷身性硬化症"systemic sclerosis"という名称のはうが,多く用いられる傾向にある.
このように,名称においても,本症はかなりの変遷があり,いまだ統一されていない,まして病因に関しては,感染,中毒,内分泌異常,自律神経異常,自己免疫説など諸説紛紛で,いずれも定説になっているものはない.さらに,本症における皮膚硬化,末節骨吸収像など,綱々の症状の病態にいたっては,他の膠原病にくらべ,不明な点が多く,解明の努力もあまりはらわれていない.
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