Editorial
肺炎の移り変わり
中川 圭一
1
1東京共済病院
pp.13
発行日 1971年1月10日
Published Date 1971/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203459
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戦前においては肺炎といえば肺炎双球菌による肺炎を意味し,これが細菌性肺炎の90%以上をしめ,病型も大葉性で,さび色の痰,1週後に下熱する分利という臨床的特徴をもった興味ある疾患であった.しかし戦後,ペニシリンをはじめとするグラム陽性球菌に感受性のある抗生物質が広く使用されはじめてから肺炎双球菌による肺炎は著しく減少し,そのうえ抗生物質投与のため典型的な経過をとる肺炎双球菌性肺炎は姿を消した.これに代わってブドウ球菌による肺炎が増加し,最近ではグラム陰性桿菌による肺炎が増加の傾向にある.
われわれの病院で1963年1月から1965年12月までに経験した細菌性肺炎は43例で,そのうち起炎菌を決定しえたものは21例で,その内訳はDiplococcuspneumoniae 8例,Staphylococcus aureus 5例,β-Streptococcus 2例,Haemophilus 3例,Klebsiella 3例であった.その後の1966年1月から1969年12月までの肺炎96例中起炎菌決定例は34例で,その内訳はDiplococcus pneumoniae 3例,Staphylococcus aureus 5例,β-Streptococcus 3例,E. Coli 2例,Klebsiella 9例,Proteus 1例,Pseudomonas 6例,Enterobacter 1例,その他のグラム陰性桿菌2例で,あきらかにグラム陰性桿菌によるものが増加している.この傾向はわれわれの病院の中央検査室における喀痰検査の年次別統計でもはっきりあらわれている.
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