特別記事・学会の話題 '71 日本医学会総会・内科関係学会から
「進歩」と「倫理」をない合わせて1本の太い綱に—開会特別講演谷川徹三氏「医学とヒューマニズム」を聞いて
砂原 茂一
1
1国療東京病院
pp.1125
発行日 1971年6月10日
Published Date 1971/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203733
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学会のテーマに即して
会場の入口でわたされた「反日本医学会総会」のビラによると「道学者谷川徹三氏」とあった.私は谷川氏を道学者とは思っていなかったが少々お古いとは思っていた.しかし聞き終わっての感想は開会特別講演者としての人選をあやまっていなかったということである.本学会のテーマ「医学の進歩と医の倫理」を考えるための一つの足場を提供したことは確かだし,なによりも救われたことは医学と医療についての中途半端な理解にもとづく,もっともらしい言及がなかったことである.
ヒューマニズムはギリシャ的思想への回帰をさけんだルネッサンスの人文主義者に由来すること,人間性ということは社会と文化のそれぞれの段階で異なるとらえ方がされるから,これをposi-tiveに定義することは難かしいが,歴史のどのような段階にも人間喪失,人間疎外が必ず起こるものだからそれへのprotestとして,つまり否定態として定義することが可能であるというのがこの講演のLeitmotivであった.
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