臨時増刊特集 日常役立つ診療技術
治療篇
XV.アイソトープ治療の実際と施行時の注意
橋本 省三
1
1慶大放射線科
pp.1007-1012
発行日 1970年5月20日
Published Date 1970/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203220
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甲状腺機能亢進症の131I療法
原理 甲状腺には身体各部に比較して,選択的に高濃度にヨードが蓄積される.過去の経験で外部照射においては,甲状腺組織はそれほど目立った放射線感受性があるとは考えられていなかったが,小児・若年者の甲状腺,亢進症を示す場合には,その放射線感受性はかなり高いものという事実が知られてきている.したがって131Iのようなγ線,β線を放射する物質を内服により投与すれば,ほとんど甲状腺にのみ集積して,内部照射を行なう.ラジオートグラムによれば,131Iは濾胞内コロイドに存在し,濾胞細胞を主としてβ線により照射していることがわかる.外部照射にみられる皮膚,気道,食道に対する照射の影響は考えないでよいので,すぐれた治療法である.meta-bolized radiotherapyと称されるものの代表的な放射線治療である.またRadiothyroide Ktomieともいわれるゆえんでもある.
甲状腺機能亢進症の治療としては,抗甲状腺剤と手術療法があり,これらとくらべて,131I療法は実施上の注意を守れば,効果は外科手術の成績に匹敵し,再発なども少なく,確実なものといえる.術創を残すこともなく,患者の負担も軽い.欠点として,放射性物質の使用,一過性ではあるが血流による全身照射であること,照射によるaftereffectとしての甲状腺自体への影響,血液,発癌,遺伝的影響についてまだ未解決のものがあり,まったく安全な治療法として確立していないことをあげなければならない.
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