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体液中に存在する物質の測定法にはいくつかの方法がある.たとえばその物質の有する化学的特性を利用して測定を行なう化学的測定法,あるいはその物質の有する生物学的効果を利用して測定を行なう生物学的測定法とよばれるものがある.このうち後者は薬理学などの領域でひろく用いられ,ここでいう生物学的効果というのは,たとえばインスリンを動物に注射すると,その動物の血糖値が下がるというような現象である.
多くの物質の定量がこのような方法でなされ,医学に多大の貢献をなしてきた.ところが,体液中にごく微量に存在するホルモンのような物質の場合には,これらの方法による測定法では困難をきわめた.特に下垂体前葉ホルモンや,インスリン,グルカゴン,副甲状腺ホルモンといったような蛋白性ホルモンの場合には,化学的には蛋白質,あるいはポリペプタイドであるために,体液中に大量に存在する蛋白質のなかから,ごく微量の特定の蛋白性ホルモンをとり出して測定することはきわめてむずかしい.かりに血清の蛋白濃度を7g/dl=70mg/mlとすると大低の蛋白性ホルモンの血中濃度は1mμg/ml前後とされているから,70,000,000mμgのなかの1mμgを検出しなければならないわけである.各蛋白質によって分子量が異なるから正確ではないが,7千万人の中から1人だけ選び出すような技術,すなわち高度の感度が必要とされる.一方,生物学的測定法にも多くの問題点があった.多くの場合,検体は血清,尿などそのものであるか,あるいはそれらの粗抽出物であり,実際にホルモンのみを動物に注射したり,試験管内(in vitro)での反応性をみるために添加する場合とは条件が異なっている.
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