EDITORIAL
薬剤による肝障害
市田 文弘
1
1新大内科
pp.595
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202205
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肝障害(Drug-induced hepatic injury)を惹起する薬剤としては,抗生剤,各種の化学療法剤のほか,フェニールブタゾンなどの抗関節炎製剤,アレビアチンなどの抗てんかん剤,経口的抗糖尿病剤,および各種のテストステロン誘導体で代表される代謝性,および内分泌性薬剤,クロールプロマジンなどの精神神経安定剤などがあげられる。しかしこのほかにもきわめて多数の薬剤が肝障害を惹起することが報告され,一般的に,特定の薬剤は肝障害を起こさないと断定することは困難であつて,むしろいかなる薬剤でも肝障害を惹起しうるといつても過言でないとさえいわれている。
かかる薬剤による肝障害の発現機序については,大多数は薬剤による過敏症に基因するが,一部の薬剤,たとえばメチールテストステロン,蛋白同化ホルモン,経口避妊薬などでは肝障害の程度は投与薬剤量に比例し,direct hepatotoxicな肝障害と考えられ,前述の薬剤過敏症による肝障害の発現機序とは明らかに相異する。一方,薬剤による肝障害の病型としては肝内胆汁うつ滞型と肝細胞障害型に2大別されるが,Smetanaは1)cholestatic reaction 2)cytotoxic reaction 3)combined cytotoxic and cholestatic effects 4)cytotoxic effects associated with presence of lipofuscin in Kupffer cellsの4型を形態学的に分類し, Popperはさらに細かく分類しているが,臨床面からは前述の2型で充分である。
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