治療のポイント
麻酔と肝障害—Halothaneによる肝障害
井上 恭一
1
,
何 汝朝
1
,
市田 文弘
1
,
加藤 滉
2
1新潟大・第3内科
2新潟大・麻酔学
pp.1742-1746
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204419
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I.はじめに
Halothaneはその非爆発性,麻酔からの覚醒の早いこと,取り扱い易いことなど数々の利点をもち,優れた麻酔剤として汎用されてきた.しかしHalothaneが用いられはじめて2年後の1958年にHalothane麻酔による肝障害例が報告され,以後,諸外国においては多くの報告例がみられ,1964年までに100例を越えるに至った,米国ではこのことについて34施設における1959年より1962年までの麻酔例で大規模なHalothane Studyが行なわれ,その結果,Halothaneの1回麻酔で肝壊死をきたすのは1万人について1.02人であるが,2回以上の麻酔では1万人について7.1人に広汎性肝壊死をきたし,他の麻酔剤に比して高率であることが明らかになった1).一方わが国においてはHalothaneによる肝障害の報告例は比較的少ない.ここでは最近,我々が経験したHalo-thaneによる肝障害(以下Halothane Hepatitis)と思われる6例についてのべるとともにHaloth-ane Hepatitisの臨床像,諸検査成績の特徴,肝の形態学的特徴,あるいは予防,治療に関する問題について若干の私見をのべる.
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