EDITORIAL
胃潰瘍の成因
大井 実
1
1慈大外科
pp.594
発行日 1968年5月10日
Published Date 1968/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202204
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胃は,粘膜面では胃底腺区域と幽門腺区域,筋層面では胃体(底)部と幽門部のそれぞれ2部に分かれ,前者の境が胃底腺幽門腺境界部,後者の境は境界輪状筋束である。いま大彎で切り開いた胃標本上で両境界線の走行をたどると,前者は小彎胃角付近を頂とする下向きの円弧,後者は逆にこれを底とする上向きの円弧を描く。したがつて,これら二つの円弧は位置の個体差により,胃角付近で交差するものもあり,しないものもある。一方,胃の潰瘍とこれら境界との位置的関係をみると,潰瘍は2円の共通部分,すなわち交差域内に位置している。潰瘍の発生には,酸性胃液の化学力,機械力の協同が必要だからである。
以上は,新しい潰瘍成因説として目下,世界的視聴を集めている二重規制学説(大井)の核の部に相当する基本データであるが,この学説以来,潰瘍成因に対する私の解釈は大きな改訂を余儀なくされた。
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