第一線の立場
診療行為と過失
臼田 正堅
1
1国立東京第二病院
pp.1008
発行日 1967年7月10日
Published Date 1967/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201855
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近年一般に医学的思想の普及とともに診療行為に対する関心が高まり,ややもすれば患者は診療に少しでも疑いがあればただちに疑惑の目にて物事を考えると同時に法的手段に訴えるという傾向がみられる。そこで診療事故に備えていかなることが業務上過失とされるか,法的面よりこれを概念的に述べてみた。
過失過失には刑事上の過失と民事上の過失があり,前者は行為者の加害再発防止の制裁が,後者は被害に対する損害の補填が目的である。民法第709条に不法行為の要件として故意と過失を規定しているが,その過失とは行為によつて違法な結果が発生することを認識していながら認識しなかつたことで客観的に事故発生の予見可能性があつたにもかかわらず怠つた,すなわち不注意のため事故発生を未然に防止し,または回避する義務を怠つたための事故—注意義務違反としての業務上の過失—である。また抽象的過失と具体的過失とに区別され前者は客観的に「善良なる管理者の注意」を後者は主観的で「自己のものと同一の注意」を怠つた場合である。民法上は抽象的過失を指している。そして過失と被害—結果的事故—との間につねに因果関係があることである。
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