法律の知識 臨床医に必要な法律の知識・1
医師の過失
唄 孝一
1
1都立大
pp.653-656
発行日 1965年5月20日
Published Date 1965/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407203621
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—法律というもの—
Q先生,先日はお邪魔いたしました.国民が誰れでもいつでも,たやすく,最高水準の医療を受けられるようにするにはどうすればよいか.いつたい今の医療制度はこれでよいか.それらについて,の先生のあの火の吐くような論鋒をきき,私は冬の夜道を歩きながらも体の中がかつかと燃えてくる思いでした.それにつけても,先生がいつたい法津なんでいうものは,と慨嘆されていましたあの言葉が耳についてはなれません.そのとき,詳しくお聞すればよかつたのですが,お話しの主題でもなかつたし,せつかくのお話の腰を折つてもと思つて黙つていたのですが,あのとき先生が何をいわれようとしていたのか,つぎの機会に是非もつとよくうかがいたいと思います.人一倍医師の責任を強調され医療の道義性を主張される先生があのようにいわれたので,法律を勉強している一員として,改めて法律というものの存在意義や意味を私もめらためて考えました.ただ,同時にそのとき私は先生ほどの人でさえ——先生,失礼をお許し下さい——.なにか法律というものについてちよつと感ちがいされているのではないか,いや,もつと卒直にいえば先生はほんとうに法律を正確にご存知の上でいつていられるのだろうか,という疑いをもつのです.どうも世間には法律を必要以上に重んじ,しかも一方で法律を必要以上に軽んじている.という両方のかたよりがあるのではないでしようか.
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