治療のポイント
末期がん患者の痛み
清原 迪夫
1
1東大・麻酔科
pp.990-991
発行日 1967年7月10日
Published Date 1967/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201846
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痛みの原因
がんの痛みといつて,手のほどこしようもない症例にしばしば遭遇するが,がん細胞そのもの,あるいはその代謝産物が,痛みを起こす刺激になつているという報告はない。したがつて,がん患者で痛みを起こす原因は,がん組織による神経根や骨の圧迫,浸潤,神経や血管への細胞浸潤,内腔臓器の狭窄や閉塞と,それに伴う組織伸展や崩壊,機械的な血管の閉塞,リンパ管の閉塞による腫張,筋膜や骨膜への浸潤や腫張形成,壊死や感染,炎症などの合併などがかさなり合つて,がん特有の痛みを形成すると考えられる。しかも進行性がんの場合,上述の痛みを起こす原因が拡大転移し,相ついで痛みの性質が激化したり,拡がつたりする一方,あるとき突然に自発痛が消失してしまうような状態がくることがある。
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