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技術者としての臨床医
川上 武
1
1杉並組合病院・内科
pp.1037-1039
発行日 1966年7月10日
Published Date 1966/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201399
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臨床医の技術の誤解
臨床医の生涯は技術問題をぬきには語れない。臨床医の技術をどう考えるかは,臨床医個人の問題にとどまらず,医療体系の展望と深くかかわりあつている。臨床医の技術と医療体系との関連を明らかにすることは,臨床医に技術者としての生きかたを示すと同時に,現在の混乱した医療体系の出口を探るうえで重要な意味をもつてくる。
臨床医の技術というと一般には,専門医と一般医(家庭医)・年長の医者と若い医者・大病院と小病院,開業医といつた対比で,問題が考えられやすい。この場合に,技術的に前者は後者よりすぐれていると無条件に信じられ,その前提のうえにたつて論議が進められることが多い。この発想の根底には,技術を形骸化したものとして把握し,それと経済問題とをからませている点がある。このような技術を固定化して考える発想からなにものも生まれないことは,専門医問題・病院医療の混乱の解決にこれといつた見通しをえられないところにあらわれている。臨床医の技術をたえず前進しなくてはならないものとして,ダイナミックにとらえないかぎり,これらの問題は堂々めぐりに終つていくであろう。
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