特集 医制100年
医療制度と医療技術
川上 武
pp.480-485
発行日 1974年9月15日
Published Date 1974/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204884
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医療制度の2つの側面
資本主義社会では医療制度は2つの側面をもっている.第1は医療技術的側面(a)であり,第2は社会経済的側面(b)である.医療・保健は医療従事者(その中核としての医師)と病人・国民の間の技術的関係(医療行為)と社会経済的関係(経済行為)の上に展開されている.医療制度がa,bの独自の体系から制約をうけると同時にa,bの間にも被制約性がある.aは医師1人の場合から医療チームによって遂行される高度の技術にいたるまで,その展開形態は多様である.bも狭義の医療制度(b1),医療保障(b2),医薬品・医療産業(b3),医学教育(b4)を含むが,ここで問題になるのは主としてaとb1の関係であるが,医療制度の構造からして,b2またはb3との関係もさけて通ることはできない.この関係は現在の医療制度の原点である開業医と患者の上に最も単純な形であらわれている.患者は開業医に医療行為を期待し,開業医はその代価として患者から診療報酬を受けとる.医療行為と診療報酬の間には一定の営利的関係がある.国民皆保険の達成(昭和36年)により診療報酬の支払い方式に建前として完全に社会化されたとはいえ,開業医と患者との間の営利的関係の本質は不変である.この関係は開業医(私的医療機関)に特有なものではなく,公的医療機関においても例外ではない.
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