私の意見
患者の目
金田 光雄
1
1館山病院
pp.380
発行日 1966年3月10日
Published Date 1966/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402201225
- 有料閲覧
- 文献概要
患者が私をみつめる目は何を求めているのだろう。何を考えているのだろう。患者を見ている私は,この世に何と私以上に不幸な人が多いのだろうと思う。彼らの私をみつめる真剣な目に私は本当の医学をもつて応えてやらなくてはならない。医業が患者の多きをもつて,経済的基礎をうち立てていかなければならないことは百も承知している。だのに,私は彼らを利用して財をたくわえようとは思わない。彼らを救うことが,同時に私を救うことになる以外の方法をもつては。彼らの無知,ことに医学に対する無知を直してやりたい。彼らは医師の目から見ると,何と見当違いな方法をとっていることだろう。クスリや注射にたよりすぎてもいるようだ。彼らは自分の健康が,クスリと注射だけで保持できると信じすぎている。普段の健康法をかえりみないで。Lawyer's housesare build on the hands of fool(バカのお陰で弁護士の家が建つ)という言葉がある。依頼者の無知を無知のままにしておいて,難解な法律用語をやたらに駆使して,依頼者から莫大なお金をせしめる法律家を諷刺した言葉である。依頼者の常識論は難解な法理論の前には無力なものと感じる体験は少なくない。法律の定めであるからではあろうが,この常識と法律の矛盾は社会に数多くころがつている。法律で割り切つても,常識では割り切れないということは放置しておいていいものだろうか。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.