メディチーナジャーナル 消化器
腹部症状を伴うSubacute Myelo-Optico-Neuropathy
松尾 裕
1
1東大・中尾内科
pp.778
発行日 1965年5月10日
Published Date 1965/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200842
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米子市における昭和39年度消化器病学会秋季大会(会長石原教授)において東大中尾教授が上記の疾患について自験例90例とくに埼玉県蕨・戸田地区において多発した45例(中島病院)をもとにして特別講演を行なつたので,その概略について述べる。
本疾患は腹痛,下痢,著明な便秘,鼓腸,いちじるしい食欲不振,悪心嘔吐という腹部症状が単独あるいは組合わさつて出現し,その後脊髄炎症状主として下半身または上肢の知覚障害,運動障害,排尿障害または視力障害などが出現してくる症候群である。そしてその本態がウイルス性疾患であるのか,中毒性疾患であるのか栄養障害によるものか不明である。また外国において報告されている腹部症状を伴いやすいポリオ類似の疾患とも症状がかなり異つており,本邦に特異な疾患であると考えられている。日本では昭和36年ごろより注目され(三重大学高崎教授,山形県立病院清野博士,京都大学前川教授)以来かなり広範囲に日本各地に散発していることが明らかとなり昭和39年内科学会総シンポジウム(司会楠井教授)においてはアンケートを含めて日本各地に823例剖検24例とされ,その後も報告例がつづいている。しかし本疾患の本態が不明であり,一つの疾患単位とするか否かについても異論があり,まだ確定した名称もなく,報告者によつても,いろいろな病名によつて報告されている。したがつてこんにちその病態生理の究明が非常に期待されていたのである。
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