メディチーナジャーナル 血液
進行性筋ジストロフィー症の異常ミオグロビン
安部 英
1
1東大内科
pp.462
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200347
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進行性筋ジストロフィー症(progressive muscular dystrophy)といえば,特有なふくらはぎの仮性肥大と大腿の萎縮,腰のまわりの痩削とよたよた歩き,そげた肩,ことにとび出した肩胛骨と上肢の運動障害,躯幹をよじ登るような起立動作などと,その臨床症状はまことに印象的である。生後数カ月で早くも発病するものから,不惑40歳におよんで初めて徴候の現われるものなど,その発病は各様で,病勢の経過も,また侵襲される筋肉の範囲も症例によりまちまちで,これらの状況からそれぞれの病型が分けられるが,近年本症の罹患がちようど血友病や色盲と同様,劣性伴性遺伝に従う可能性が明らかになつて,急に遺伝学的検討の興味を集めるようになつた。
本症の症状発現の機序については,昔から筋線維自体の新陳代謝に異常が起こるためと考えられたが,わが国では有名な呉学派の業績により,自律神経,ことに交感神経の障害によることが提唱され,認められてきた。もとよりこのさいにおける侵襲筋肉やこれにつながる神経線維の組織学的検索はつぎつぎと行なわれ,なかでも筋肉組織の虚血と脱線維,および筋線維の類脂体沈着,グリコーゲン,ミトコンドリアの減少,萎縮,さらには結合織との置換が特長である。
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