私の意見
医師の新しい社会的地位
帯刀 弘之
pp.420-421
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200334
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医師の主体性論の背景には
最近京都市で国保の家族給付率の引下げが行なわれようとしている矢先,一部の医療機関の請求ミスをあたかも大きな不正請求のように報道された事件があつた。医療についていろいろの問題が社会面に報道されることはこんにち珍しいことではない。かつての病院争議や保険医総辞退に端を発して,医療が大きな社会問題となり医療制度のありかたについて医師会,学術会議第7部会などで論議され,38年には医療制度全般についての改善の基本方策に関する答申が出されたことは周知のことである。答申では医師の主体性や医の倫理が説かれており,医療の本質は医師と患者との人間関係の場での医師の主体性にあるとされている。複雑な現代社会のメカニズムのなかで人間疎外が文学や社会科学で論じられ,疎外感を意識するしないにかかわらず現代人のゆきかたは多様であり,行動の変化もめまぐるしい。現在の日本の医療のメカニズムのなかで診療に従事している医師もその例外ではない。
一般的に主体性論の出てくる背景には,主体性を脅かすなんらかの原因があるのがつねである。
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