私は考える
助産婦の地位と役割
山本 幸子
1
1日赤産院助産婦学校
pp.27-28
発行日 1961年3月1日
Published Date 1961/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202088
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自分はどこに居るのだろうか.
海にぽつかり浮んだ,小さい島国に住んでいるといつても,山は高いし,河は広いし,収穫の終つた,そして雨に濡れ黒つぽく,よく肥えた土壌を思わせる田園は遠く霞んで,自然は神秘的で,いつもと変らずに偉大だ.又,東京の真中に来ると,ビルの谷間では,丸い空も四角や三角になり,銀行の玄関先にあるデッカイ柱も,部厚い壁も,人間の造つた物の偉大さが心にしみてくる.これらは,まつたく日常生活の中の風物であり,この中にうごめいている人間のことを思うと,哀れでならない.毎日せかせかと起き上り,せかせかと歩き,せかせかと寝床に入り,いつの日か行きつく所といえば,皆,平等に墓場であり,土に帰るのだ.
社会学とは,人間の社会学的共同生活を研究する学問であるといわれていましたが,要するに,対人関係,人間集団の過去・現在・未来を追求し,人間の生活,または人生の概略を把握するものだと思う.いいかえると,空気のように変容性が大で,多様性で,形におさめることの出来ない人間の生活や,人生というものの本質を,過去・現在の事実から分析・綜合して,ある型を定め,沫来を推定する——社会学とは,こういつたものではないだろうか.
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