研究報告
農村家庭婦人の地位
小池 善一
pp.31-32
発行日 1952年9月10日
Published Date 1952/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200356
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公衆衞生の向上も社会福祉の進歩も婦人の社会的地位の向上なしには考えられません。しかしはたして農村でも婦人の地位はよどみなく向上して居るでありましようか。公衆衞生が進歩し,女子が封建的退嬰的生活状態から解放され,知性が進みますと妊娠期男女死亡比は男子100に対して女子85乃至90になると言われて居りますが,表Ⅰに見るように私共の管内では正に逆コースで年々女子の死亡比が高くなつて居ります。そしてその死因を15歳から39歳までの年今で調べて見ますと表Ⅱに見るように心臓病や肺炎で死亡する女子が増加し,結核で死亡する者の割合も男子程には減少して居りません。この事実は主婦の過労と,一且病床に伏したらペニシリンの注射も満足に受けられない等色々な意味の貧困さを表わして居らなければ幸です。
そして表Ⅲは農村の主婦には離婚によつてこの苦しい家庭生活から逃がれる道も余り広くはあけて居らない事実を示して居ります。都会では斜陽族の離婚などが話題を賑わして居る時でも農村主婦は倒れるまで働くことを余儀なくされて居るのではないでしようか。併し表Ⅳによつて死別後の再婚が減る一方離婚別後の再婚が徐々に増加して居る事実は農村の婦人も封建的な家族観貞操観から徐々に解放されここに黎明の近きを見る思いがします。
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