私の意見
現代病院における医療の動向と勤務医の倫理性に関連して
加藤 新
1
1国立横浜病院
pp.421-422
発行日 1964年6月10日
Published Date 1964/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402200335
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現代の比較的大きな病院では,最近ますます分業化が進んできた。医師や看護婦のほかに数多く医療従事者があり,全体が一つの組織体となつて診療という業務がうち出されている。この場合,医師をのぞいた他の医療従事者たちは8時間勤務制をとつている。したがつて日々の業務には一定のスケジュールがたてられ,医師の回診時間なども,この「わく」のなかに組み込まれてくる。とにかく経営の,いわゆる近代化がおし進められてきた結果は,どうしても上に述べたようなぐあいになるのが必然の勢いなのであろう。また事実,現にそうなつてきていると見ねばなるまい。まことに規格化,合理化体制こそは,現代文明の進みつつある方向で,これにたち遅れることはとりもなおさず進歩に逆行することであるかに見える。
ところで,この文明の傾向にとつて,およそ取り扱いにくいのが臨床的医療業務のはずである。人はいつ急におもい病気になるかわからないから診療時間にスケジュールの「わく」がはめられていても,それはたえず乱される。そして,このような不時の業務にさいして診療の主体となる医師と,それ以外の8時間制をもつて業務をわりきつている,医師以外の,他の医療従事者との問には摩擦が起こりがちである。
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