書評
ゲノムと疾患
黒川 清
1
1東京大学先端科学技術センター
pp.259
発行日 2005年2月10日
Published Date 2005/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107511
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遺伝子の二重らせん構造が明らかにされた1953年から50年後,ヒトのゲノムの塩基配列が解読された.これにはコンピュータ演算能力の長足の進歩,分析法のマイクロ化・オートメーション化が進んだことで可能だった.このようなゲノム解析が可能になると何が変わるか.20世紀の100年で人間社会は大きく変わった.出生時余命は40歳から80歳に,人口は16億から64億に,工業化と都市化による生活は疾病構造,社会構造をすっかり変えた.そこでゲノム解析が可能になったが,何を知りたいのか,何のためなのか.本書はゲノムとゲノム解析,そして各種主要疾患の遺伝子の変化などについて,第一線の研究者によって書き著したものである.
対象とされる読者は医学医療関係者であり,ゲノム分野についてよく耳にする言葉が手際よく解説されている.ゲノム計画,マイクロアレイ,SNP,また取り上げられている疾患も近年話題になっている糖尿病,高血圧,高脂血症,自己免疫疾患,Alzheimer病,骨粗鬆症,癌など,多くが生活習慣病というカテゴリーのものであり,ファーマコゲノミクス,遺伝カウンセリングまで記されている.図表も多数あり,手元においてあると便利な書であろう.
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