特集 内科診療にガイドラインを生かす
消化器疾患
過敏性腸症候群
永田 博司
1
1けいゆう病院内科
pp.181-185
発行日 2013年11月1日
Published Date 2013/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107101
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内科診療に役立つ国内外のガイドライン
わが国の過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)診療ガイドラインは,RomeⅢ診断基準(表1)が公刊された2006年に,東北大学病院心療内科のグループが,いち早く作成した(表2).わが国のIBSは軽症が70%,中等症が25%,重症が5%を占めることから,この順に一般内科医,総合病院の消化器内科医,専門病院の心療内科医を受診することを想定し,3段階に分けた治療フローチャートを提示しており,実用的である(図1)1).残念ながら,推奨グレードやエビデンスレベルの評価はなされていない.最近,新たなIBS治療薬も開発,保険収載されており,これらの評価を含む最新の診療ガイドラインが,日本消化器病学会から,近々,示される予定である.
欧米では家庭医と専門医のコンセンサスによる診療ガイドラインがいくつか提示されている(表2)2~5).英国National Institute for Health and Clinical Excellence(NICE)のガイドラインはオンラインアクセスが可能であるが,full textは膨大である.独国のガイドラインでは,腹痛と便通が連関しなければならないというRomeⅢの必須項目を緩和して,腹部膨満感や放屁などの症状を追加し,また患者のquality of lifeが損なわれていることを診断基準に加えている4,5).IBSの診断や食事療法についてはエビデンスレベルの低いものが多く,各国の社会背景,医療事情によりステートメントに解離がみられる.
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