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内科診療に役立つ国内外のガイドライン
Crohn病(Crohn’s disase:CD)の本邦での患者数は増加の一途を辿っており,現在35,000人以上の罹患者がいる.患者数の増加に伴い,CDは炎症性腸疾患専門医でなくても,日常臨床で遭遇し得る疾患となってきている.患者数の増加に加えて,インフリキシマブに代表される抗TNFα抗体製剤の登場によって,ここ10年でCDの治療体系は劇的に変化した.こういった状況を踏まえ,CDの診断・治療に関するガイドラインが切望されるようになってきた.そこで,厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班と日本消化器病学会が合同で,2011年10月に「クローン病診療ガイドライン」を発行した1).本ガイドラインの目的は,本邦のCD診療における適切な指標の提供を通じて,患者アウトカムの改善に寄与することである.そのため本ガイドラインは,疾患概念,病態,診断,治療,経過観察,妊娠時などの特殊状況までを包括する内容となっている.本ガイドラインは英訳され,海外,特にアジア諸国に向けての情報発信の役割も担っている2).
本ガイドラインは,患者の視点に立脚した臨床上の疑問(clinical question:CQ)に対する推奨ステートメントという形式で作成されている.各ステートメントには文献エビデンス・レベル,および専門家のコンセンサス・レベルの両者により規定された推奨グレードが付与されている.この専門家のコンセンサス・レベルが推奨グレードに反映される点が本ガイドライン作成の大きな特徴である.専門家のコンセンサス・レベルを推奨グレードに取り入れることにより,古くから臨床に定着しているがエビデンス・レベルの低い治療法や,エビデンス・レベルが高くても実際の臨床的有用性の劣る治療法などの推奨グレードを是正することが可能となり,より実臨床に近い推奨グレードを与えることが可能となる.
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