- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
内科診療に役立つ国内外のガイドライン
睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)の領域において世界をリードしているのは米国睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)であるが,いわゆるガイドラインと銘打ったものは発表されておらず,診断と治療のスタンダードという意味合いの報告が1999年にSleep誌に発表されている1).したがって,そこには現在ではガイドラインに必須である推薦度やエビデンスレベルなどは記載されていない.そして,SDBのなかで個々に必要な事項についてAASMとしてのコンセンサスをガイドラインとして,年を追って機関誌であるSleep誌に発表している.例えば,hypopneaの定義および評価についてのガイドライン2)や簡易型の睡眠モニターについてのガイドライン3)などが発表されている.したがって,SDBに関する個々の事項について何か知りたいときにはSleep誌を検索すればよい.SDBは睡眠だけでなく呼吸障害を伴うため,米国胸部学会(American Thorocic Society:ATS)やAmerican College of Chest Physician(ACCP)と共同のガイドラインも数多く発表されている.他国のガイドラインでは英国(スコットランド)4),カナダ5)から発表されている.特にカナダのガイドラインは2006年に第1版が発表され2011年に第2版が公表されており最新のガイドラインである.コンパクトにまとめられており,質問―回答形式で構成されており実際の診療に有用である.
わが国のガイドライン6)はSDBの代表的疾患である閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)に限って作られており,2005年に睡眠呼吸障害研究会から出版されている.このガイドラインが作られたのには理由があり,それは,2003年に起こった山陽新幹線運転士の居眠り事件である.この運転士が重症のOSASであったことが報道され,大きな社会的現象となった.そのため,この疾患を医学的,社会的に認知させ早期診断,早期治療を促すためにガイドライン作成が急がれた経緯がある.したがって,現在のようにエビデンスレベルうんぬんの形式をとっていない.睡眠呼吸障害研究会は1988年に第1回研究会が開催され,そのメンバーはSASをはじめとする睡眠と呼吸障害との関連に興味をもった呼吸器内科医,循環器医,耳鼻科医,精神科医,神経内科医,歯科医などから構成されており学際的な研究会である.本ガイドラインは当時のレベルでのコンセンサスをまとめたものであり,ガイドラインというよりOSASの診断と治療のマニュアルという表現のほうが適切かもしれない.その内容がAASMの勧告をほぼ忠実に踏襲しているのはやむを得ないことであろう.本ガイドラインは睡眠呼吸障害研究会によって公表されたものではあるが,日本呼吸器学会,日本呼吸管理学会(現日本呼吸ケア・リハビリテーション学会),日本睡眠学会,日本気管食道科学会,日本口腔・咽頭科学会などのわが国の主要な学会が後援している.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.