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はじめに
COPD患者の多くは高齢者であり,不眠や中途覚醒などの睡眠障害を訴える頻度が比較的高い.健常者においても,高齢者は生理的に若年者に比べ深睡眠(non-REM睡眠III-IV期)が少なく,中途覚醒が多いのが通常であり,高齢者がしばしば不眠などの睡眠障害を訴えることはよく経験されることである.COPD患者も多くは高齢であるため,同様の訴えをしばしば受けることがある.しかし,COPD患者における睡眠障害の多くは,睡眠そのものが障害されるというより,むしろ睡眠中に起こる呼吸の異常,すなわち睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing;SDB)によって惹起される睡眠障害であると考えられている.呼吸は睡眠により大きな影響を受ける.通常は睡眠により呼吸は抑制され,分時換気量は低下する.COPD患者では既存の低肺機能状態が睡眠中に増悪し,特にガス交換が障害され,このSDBにより睡眠の障害が起こってくる.睡眠薬は睡眠時の呼吸抑制を増大させ,SDBを増悪させる危険性があり,COPD患者が不眠などの睡眠障害を訴えた場合の処方には睡眠中の病態を十分に考慮しなくてはならない.
これまでのところ,COPD患者における睡眠障害そのものの検討は少ない.その原因として,COPD患者に対して睡眠検査(polysomnography;PSG)を施行することの困難さが挙げられる.睡眠の質の判定では,脳波,眼電図,筋電図などの測定が必須であり,これなくして睡眠障害を知ることはできない.しかし,多くの研究は,夜間睡眠時の呼吸異常,すなわちSDBの詳細な検討に終始しているのが現状である.睡眠の質の低下は患者のquality of life(QOL)を直接的に障害する可能性があり,今後さらに詳細な検討が必要になると思われる.
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