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WindowsでもMacOS XでもLinuxでも動作し,信頼性が高いため,今や世界標準となりつつあるデータ解析フリーソフトRは,Rcmdrという追加パッケージによってメニューから操作できるようになるが,サンプルサイズの設計やメタアナリシスといった技法はRcmdrのメニューになかったし,生存時間解析にもプラグインを追加する必要があった.医療統計で用いられるこれらの手法の多くをメニュー操作できるようにRcmdrに機能追加し,R本体も含めて再パッケージ化することでインストールを容易にしたものがEZRである.本書にはCD-Rも添付されているが,著者のwebサイトから常に最新版を入手でき,インストール後は起動アイコンをダブルクリックするだけでR本体と同時にEZRまで起動するように作られている点が便利である.
通常,「アクティブデータセット」というメニューでデータハンドリングし(第6章),「グラフ」でさまざまなグラフを作り,「統計解析」というメニューでデータ解析を行う.EZRの最大の特徴として,統計解析の体系がデータの種類(尺度の性質)ごとに整理されている点が挙げられる.このことにより,EZRはきわめて実践的なデータ解析環境となっている.例えば,一般の教科書とは違って,クロス集計による独立性の検定も,対応のある2群の割合を比較するマクネマー検定も,ロジスティック回帰分析も,同じ「名義変数の解析」というメニュー(第7章)から選択できる.しかも,本書はたんなるEZRの操作マニュアルではなく,解析方法の仕組みや意味まで書かれており,実行例として示されているデータも著者自身がすでに研究し論文として受理されたものに基づいているので,医学統計演習の教科書としても使えるし,リファレンスとして引用することもできる.Rmcdrのカスタマイズの方法まで1章が割かれており,中級以上のRユーザであっても勉強になる点が多い良書である.
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