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血液疾患(血液の病気:血液病)は,レジデントや一般臨床医には敷居の高い領域である.日常診療に当たっている若手医師が,白血病や悪性リンパ腫などの代表的な血液病に接することが少ないのが一因であろう.また,造血器腫瘍や難治性造血器疾患などの致死的疾患は,専門医が診る特殊で難しい疾患という印象を持つレジデントも多い.確かに,血液病は,遺伝子や分子レベルでの新たな診断法が次々と開発され,治療に関しても,従来の薬物療法に加えて,分子標的療法,移植による抗腫瘍免疫療法と多彩な治療の選択肢が存在している.血液病は,常に新しい知識を習得するとともに,絶えずそのブラッシュアップが求められる領域である.しかし,実際に血液病棟で研修を行うと,血液病の基礎ならびに多くの全身性の疾患の管理が学べることに気付くことが多い.
従来,血液病棟で働く多忙な若手医師から,要領よく必要最小限の事項を短時間で学べるマニュアルが切望されていた.このような時に,本書『血液病レジデントマニュアル』に巡り合えたことは幸いである.本書は,造血器腫瘍を中心とする血液疾患ばかりでなく感染症などにも造詣が深く,学生,研修医やレジデントに大変信頼されている神田善伸氏が執筆されたものである.血液疾患全般について,基礎知識,診断基準,鑑別診断や治療メニューなどの情報が一目でわかるように実に要領よくまとめられている.また,抗がん剤についても,その適応,使用方法,有害事象などのきめ細かな事項が網羅されており,確かに資料集としても手元におきたくなる1冊である.いかにしてミスのない化学療法が行われ,また副作用を軽減させるかという造血器腫瘍治療第一人者の意図が感じられる.さらに,ポケットサイズで常に携帯できるのもありがたい.
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