JIM Library 私の読んだ本
百村伸一(監修),加計正文・神田善伸・小山信一郎(編集)『総合診療力を磨く「40」の症候・症例カンファレンス』
前野 哲博
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1筑波大学医学医療系地域医療教育学/附属病院総合臨床教育センター・総合診療科
pp.749
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103310
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最近,総合診療,特に臨床推論の教育に対する注目が高まっている.臨床推論の能力を磨くには,実際の症例をベースとした徹底的なディスカッションの中で学ぶのが最も効率的であるが,残念ながら,その指導を日常的に行っている施設はまだまだ限られているのが現状である.このたび上梓された本書は,総合診療能力に関する教育に長年取り組んでいる自治医科大学附属さいたま医療センターでの総合回診をもとに構成されており,豊富な症例とわかりやすい記述で,時間と場所を選ばず臨床推論を学ぶことができる良書である.
本書は,大きく症例編と症候編に分かれている.症例編では実際の症例をベースに,診断・治療に至るまでのプロセスが簡潔にまとめられている.ケーススタディは,多くの医師が一生お目にかからないような特殊な疾患や,いわゆる「どんでん返し」のような印象に残りやすい症例が取り上げられることが多いが,本書は,例えば主訴が胸痛で診断が心筋梗塞といった,きわめてオーソドックスな内容になっている.ただ,その議論は単なる「診断当てクイズ」ではない.病歴からどんな疾患を想起すべきか,見逃してはいけない疾患は何か,絞り込むポイントは何か,どんな検査を行うべきか,注目すべき結果は何かといった,医師がたどるべきプロセスが一つひとつ丁寧に述べられている.どれも実際の症例なのでリアリティがあり,また指導医とレジデントの会話形式で進められているので,肩に力を入れずに楽しみながら読み進めることができる.
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