REVIEW & PREVIEW
基礎研究の知見を腎臓病診療に生かす
高折 光司
1
,
柳田 素子
1
1京都大学大学院医学研究科腎臓内科学講座
pp.904-906
発行日 2012年5月10日
Published Date 2012/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105959
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最近の動向
社会の超高齢化や糖尿病患者の増加などに伴い,本邦での血液透析患者は年々増加している.透析患者の増加は医療経済上も大きな問題となっており,末期腎不全の予備軍としての慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が近年注目されるようになってきた.日本腎臓学会の統計によると,日本国内のCKD患者は1,330万人と推定されており,成人の8人に1人が相当し,現在の国民病といえる.また,CKDは末期腎不全のリスク因子であるだけでなく,心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)の発症リスクでもあり,生命予後の低下の一因となっている.腎臓病の早期診断や早期の治療介入により,末期腎不全への移行やCVDの発症を抑制させることがCKDの概念を定着させる重要な目的の一つである1).
CKDが進行したときに共通してみられる所見として,腎臓の線維化や腎性貧血が挙げられるが,これらの病変は進行すると不可逆的な変化になり,既存の治療では治すことができない.腎性貧血の治療薬として,赤血球生成促進薬が現在使用されているが,根治的な治療法にはなっておらず,また頻回に使用する必要があるために,医療経済上も大きな問題となっている.
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