今月の主題 視ないで診る消化器疾患―考える内科医のアプローチ
Editorial
考える消化器内科診療
上野 文昭
1
1大船中央病院
pp.1512-1514
発行日 2011年9月10日
Published Date 2011/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105353
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消化器とはどのような臓器か
医学の基礎に戻ろう.消化器とはどのような臓器系統であろうか.口から食道・胃・小腸・大腸を経て肛門へと続く消化管,そして肝臓,膵臓,胆道系などの臓器を含み,ほかにも関連する臓器が少なくない.では,これらの臓器はどのような働きをしているのであろうか.消化・吸収だけにとどまらず,運動,代謝,内分泌,免疫などにかかわる多彩な機能を有している.肝胆膵に比べて一見単純そうで原始的にみえる腸でさえ,その表面積は皮膚の200倍もあり,末梢血管の55%を引き受け,支配神経は脳以外の神経の50%に上る.さらに免疫に大きな役割をもつリンパ球の60%が存在する.単に食物を運び消化・吸収する管などではなく,最も高度で未解明の臓器である.このほかいくつかの消化器臓器も,生命を維持するのに必須であることが知られている.
消化器臓器障害の原因は,先天性異常,細菌・ウイルス・寄生虫・真菌感染,免疫異常,薬剤,アルコール,血流障害,神経障害,外傷,心身的異常,新生物と多岐にわたり,原因が特定されていない疾患も少なくない.現れる障害も炎症,機能障害,機械的障害,腫瘍など多彩をきわめる.疾患の多様さのため,診断的検査法は一般血液・尿・便検査,血液化学検査,血清学的検査,感染症検査,免疫学的検査,生理学的検査,運動機能検査,単純・造影X線,内視鏡,超音波,CT,MRI,PETなど数多く,治療法も生活指導,薬物治療から手術,放射線治療などだけでなく,内視鏡やカテーテル,アブレーションを用いた低侵襲治療,さらに心療内科的アプローチまできわめて範囲が広い.
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