特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
内分泌学的検査
甲状腺・副甲状腺
カルシトニン
石川 敏夫
1
1帝京大学医学部附属病院内科
pp.338-340
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104785
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
カルシトニンは甲状腺C細胞から分泌される32個のアミノ酸からなるホルモンである.C細胞由来腫瘍である甲状腺髄様癌の患者では高カルシトニン血症がみられる.また,肺小細胞癌,乳癌,カルチノイド症候群,膵癌,褐色細胞腫,副腎皮質癌,子宮頸癌などの腫瘍が異所性にカルシトニンを産生している場合も異常高値になりうる.一方,血清カルシトニンが低値(甲状腺全摘術後など)の場合には,臨床的意義はないと考えてよい.
臨床現場では高・低カルシウム血症の原因究明のためと称してカルシトニンが測定されていることがあるが,ほとんど役には立たない.また,かつては骨粗鬆症にエルカトニン注射が汎用されていたことから,骨粗鬆症患者におけるカルシトニン不足が疑われたが,実際には患者で血清カルシトニンが低い傾向は認められなかった1)ので,骨粗鬆症患者でもカルシトニンを測定する意味はほとんどない.カルシトニンは確かに骨吸収を抑制するが,そもそもヒトにおいては生理的にどれだけ重要であるのか不明であり,例えば甲状腺全摘術後に甲状腺ホルモン補充は必須であるが,カルシトニンは補充されない.
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