増刊号 尿検査法
II.各論
19.ホルモンおよび関連物質
2)副甲状腺関連
(2)カルシトニン
多久和 陽
1
1東京大学医学部脈管病態生理学教室
pp.204-205
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901120
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はじめに
カルシトニンは,主として甲状腺によって産生されるアミノ酸32個からなるペプチドホルモンである.カルシトニンは骨吸収を抑制し,血清カルシウム濃度を低下させる.しかし,ヒトではカルシトニンの主要産生臓器である甲状腺を全摘出した患者においても目だったカルシウム代謝異常がみられないことから,カルシトニンのカルシウム代謝調節作用は,副甲状腺ホルモンや活性型ビタミンDなど他のカルシウム調節ホルモンのそれに比較してはるかに弱いものと考えられている.
日常診療においてカルシトニンの測定を必要とする場合は必ずしも多くないが,カルシトニンの測定は甲状腺髄様癌の診断において威力を発揮し,必要欠くべからざる検査となっている1).甲状腺髄様癌はカルシトニンを過剰に産生し,本症患者ではカルシトニンの血中濃度は異常高値を呈する.甲状腺髄様癌の診断には通常血中カルシトニン基礎値の測定で十分であり,尿中カルシトニンの測定を必要とすることは少ない.しかし,早期の甲状腺髄様癌患者では血中カルシトニン基礎値が正常域との境界値を示し,診断に苦慮することがある.また,血中カルシトニンが正常値から異常高値にかけて変動を示す症例も知られている.これらの症例では,甲状腺のカルシトニン分泌能をよりよく反映すると考えられる尿中カルシトニンの測定が有用であると報告されている2,3).
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