特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
血液生化学検査
糖質および関連物質
HbA1c(グリコヘモグロビン)
三家 登喜夫
1
1和歌山県立医科大学医学部臨床検査医学
pp.212-214
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104745
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
ヘモグロビンにグルコースが非酵素的に結合(糖化:glycation)したものがHbA1cである.一般的にヘモグロビンβ鎖N末端のバリン残基が最も糖化されやすい部位(60%以上)である.この検査は,グルコースは自由に赤血球膜を通過できること,赤血球内にはグルコースが結合する相手であるヘモグロビンが十分量存在することより,ヘモグロビンの糖化はグルコース濃度に依存するということを利用したものである.赤血球の寿命を考慮すると,HbA1cの血中(赤血球内)濃度は過去1~2カ月間の血糖コントロール状態を反映すると考えられており,世界中で糖尿病患者の血糖コントロールの指標として用いられている.
現在までに米国で行われた1型糖尿病患者を用いたDCCT(Diabetes Control and Complications Trail)や本邦で行われたインスリン治療2型糖尿病患者を用いたKumamoto Studyなどにより,HbA1cを低下させると糖尿病の慢性合併症の発症や進展に対して好影響を与えるというエビデンスが報告されており,それぞれHbA1c〔NGSP:National Glycohemoglobin Standardization Program(米国のHbA1c標準化委員会)〕値<7.0%,HbA1c〔JDS:Japan Diabetes Society(日本糖尿病学会)〕値<6.5%が治療目標値として勧告されている.また,糖尿病とは「持続する高血糖状態」であることより,血糖値と同時測定することでHbA1cが糖尿病の診断にも用いられるようになっている.
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