特集 目でみる診療基本手技
診療手技
小外科的治療手技
創傷後の感染予防
吉田 路加
1
,
長田 学
2
,
岩田 健太郎
3
1名古屋第二赤十字病院総合内科
2近江八幡市立総合医療センター救急診療科
3神戸大学医学部感染症内科
pp.206-214
発行日 2008年12月20日
Published Date 2008/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103703
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創傷後の予防的な抗生物質の投与
ポイント・適応と処置の実際
創傷後の感染予防に抗生物質が必要か? 答えは否である.いや,正確にいえば“ほとんど”の場合は,否である.なぜか? それは筆者に与えられたテーマの対象が,一般内科に勤務する研修医,若手医師が対象だからである.一般内科医が相手にしていい範疇(つまりは整形外科のコンサルトを必要としない範疇)の創傷に限って,ということである.こう書いてしまうと身も蓋もないということになってしまう.しかし,何でも自分1人でやらざるを得ない状況(コンサルトする,かぎりぎりの判断を自分でしなければいけない状況)にいる僻地勤務の若手医師や開業されている先生もいらっしゃるだろう.そこで本稿では,ほとんどの単純な創傷では,抗生物質が不要である根拠と,逆に必要な状況とを併せて以下に述べたいと思う.
一般的に,感染が成立する過程として,受傷後3~4時間程度で皮膚に常在している黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が創面へ侵入,繁殖する.この時点で抗菌薬を使用することによりその後の創感染を防ごうとするのが予防投与の概念である.ミクロの視点からいえば,すでに繁殖した菌の治療であるといえるが,マクロの視点から見ると明らかな蜂窩織炎の予防となるため,予防投与といわれる.黄色ブドウ球菌や連鎖球菌を対象としているため,第1世代セフェムを用いることが多い.ただし,病態生理的には有効であるように思える治療法が,実際の臨床では全く効果がなかったり,逆に有害であることはよく経験されることである.ここは1つ,クリニカルトライアルをみてみるしかないのである.
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