書評
心不全の診かた・考えかた
小室 一成
1
1千葉大大学院・循環病態医科学
pp.379
発行日 2008年2月10日
Published Date 2008/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103246
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編:北風 政史
B5 頁288 2007年 定価6,825円(本体6,500円+税5%) [ISBN978-4-260-00408-4] 医学書院刊
心不全にはいくつもの問題がある.まず第一に患者数の多いことである.疾患統計の確かな米国において,心不全患者数は,1950年より増加し続けており,最近では毎年50万人が新たに心不全と診断され,現在500万人の患者がいる.推計では,この増加傾向は2040年まで続くといわれている.人口比と心筋梗塞発症頻度から推定すると,わが国には,100-200万人くらいの心不全患者がいると考えられる.生活習慣が欧米化し,急速に高齢化社会を迎えているわが国において,当然ながら,心不全患者数は増加している.心不全のもう一つの問題は,その不良な予後である.心不全全体の5年生存率が50%,重症心不全では3年生存率は30%以下である.この数字は,重症疾患の代表である癌と比較しても決して劣らない.さらにもう一つ問題点を挙げるとすると,高額な医療費である.心不全は,予後が不良とはいえ,軽症から重症まで,種々の治療法があり,入退院を繰り返すことが多い.その結果,多くの国において,1疾患にかかる医療費としては,トップである.このように心不全は癌と並ぶ重大な疾患であり,その発症機序を解明することがきわめて重要である.
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