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Ⅰ.心不全にかんする臨床的(多少, 病態生理学的な)分類
Pulmonary insufficiencyとrespiratory failure1)は別のものであるが,英語では,cardiac (heart) fai—lureが,ドイツ語では,"Herzinsuffizienz"が使われている(蛇足ながら,Herzfehlerは心弁膜症の謂である)。1968年に,Reindellら2)が編集したHerzinsuf—fizienzの冒頭には,英訳をならべてあり,それには,"heart failure"としてある。衆知のように,N. Y. H.A.(1964)3)は,病因的・解剖学的・生理学的に心疾患を分類しているが,生理学的分類のなかで,心筋の収縮性障害のうちに,心不全cardiac insufficiency (heart failure)をあげている。そして,重症度にかんしては,表1のように述べている。心不全の定義としては,心機能の変化によって不当の循環状態(血流の低下,または,うっ血)が現われることとした。病態生理学がはっきりしているなら,予備力の減り・うっ血性心不全congestive heart failure・右心不全right heartfailure,あるいは,左心不全ということばも使える。おもな自覚症と,他覚症を述べ,「うっ血」が心不全によらないで,急性腎炎・重症な貧血・妊娠,および,ステロイドの使用などでもおこることを注意し,かつ,かような心不全によらない「うっ血」時にも,発作性夜間性呼吸困難・末梢の浮腫・循環時間の延長,および,静脈圧の亢進などが,おこりうることを述べている。心不全cardiac insufficiency (N. Y. H. A. p.110)の重症度にかんする分類は,あまりにも,有名であるから,ここでは述べない。ただし,この点では,表2,3のA. M.A.の考えかたも,臨床には役立つと思う4)。
心不全ということば,および,その内容について最近,本誌も座談会をもった。腎臓病学方面でも,renal insufficiencyとfailureについて,話合いがあったそうである。ただ言葉いじりではなく,その内容が時代とともに,変わってきたゆえ,概念を整理しておくことは大切である。臨床的用語としてはじまった「心不全」を,今日の医学的リベルで語るとき,その範囲が広いのには,あきれるばかりである。
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