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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
肝腎ミクロゾーム抗体(anti-liver kidney microsome antibody:LKM抗体)は腎臓の近位尿細管と肝細胞の細胞質に反応する自己抗体である.LKM抗体は慢性活動性肝炎患者血清中で初めて発見され,ラット腎および肝細胞を基質とした間接蛍光抗体法での染色パターンにより3種類 (LKM-1,2,3) に分類される.臨床的に測定意義が大きいのは自己免疫性肝炎の病型分類に用いられるLKM-1抗体であるため,以下,本稿ではLKM-1抗体に関して述べる.LKM-1抗体が陽性となる機序は不明であるが,その対応抗原は,三環系抗うつ剤などの代謝に関与するcytochrome P450ⅡD6(CYP450ⅡD6)であることが近年同定された.
臨床上の重要性と選択
自己免疫性肝炎は検出される自己抗体により,抗核抗体(anti-nuclear antibody:ANA)および抗平滑筋抗体(anti-smooth muscle antibody:SMA)が単独あるいは両方出現するⅠ型,LKM-1抗体のみが単独陽性であるⅡ型,soluble liver antigenに対する抗体が陽性であるⅢ型に分類される.自己免疫性肝炎Ⅱ型の臨床的特徴として,若年者に好発し症例の90%が女性,典型的な自己免疫性肝炎と異なりγ-グロブリン低値例が多く,高率に重症化し副腎皮質ステロイドに抵抗性で,予後不良であることが多いと報告される.自己免疫性肝炎 Ⅱ型はANAやSMAなど他の自己抗体が陰性であることより早期診断に苦慮する症例も多い.したがって,この病態を疑った場合,LKM-1抗体の測定は診断上極めて重要である.本抗体陽性である自己免疫性肝炎II型はわが国ではきわめて稀とされていたが,近年報告例が増加傾向にある.なお,自己免疫性肝炎I型患者血清におけるLKM-1抗体陽性例も報告され,本抗体の病的意義や自己免疫性肝炎の分類における位置づけに関してはいまだ検討課題が残されている.
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