増刊号 新しい臨床検査・未来の臨床検査
各論
3.免疫血清検査
5 抗LKM-1抗体
宮川 浩
1
,
北澤 絵里子
1
,
菊池 健太郎
1
1帝京大学溝口病院第4内科
pp.1206-1211
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101088
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はじめに
C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus,HCV)の発見後のHCV感染診断の確立によって,わが国の慢性肝炎の原因の大部分はHCVやB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus,HBV)感染によることが明らかにされた.同時に,肝炎ウイルス以外の原因とされる薬剤性やアルコール性肝障害と,自己免疫異常に基づく自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis,AIH)の疾患概念も,ウイルス肝炎の除外が容易になったため,より明確になった.
AIHは中年以降の女性に好発し,肝細胞障害の成立に自己免疫機序が想定され,免疫抑制薬,特にコルチコステロイドが著効を奏する慢性肝炎である.わが国の厚生省班会議でまとめられた診断指針1)のうち,主要所見を表1に示した.AIHでは表2に示すように,抗核抗体(antinuclear antibody,ANA),抗平滑筋抗体(anti-smooth muscle antibody,ASMA)などの自己抗体が血中に検出されることが血清学的な特徴の1つである.このうち,ANAが最も高頻度に検出されるが,本抗体は全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus,SLE)をはじめとする全身性膠原病でも極めて高率に検出され,疾患特異性は低い.さらにAIHのうち,通常の臨床像とは異なり,重症肝炎や劇症肝炎様の経過を示す一群があり,これらの疾患群の血清マーカーの候補として,抗LKM-1抗体が注目されるに至った.
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