- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
検査を行う場合,すでに症状や身体所見から特定の疾患を鑑別に挙げており,検査そのものは診断仮説が正しかったかどうかを証明する手段として位置づけられるべきである.成長ホルモン(growth hormone:GH)の測定を行う場合,先端巨大症や成長ホルモン分泌不全性低身長(growth hormone deficiency:GHD),下垂体機能低下症を疑い,「おそらくGH分泌に異常があるであろう」との仮定のもとにGHを測定し,その結果が仮定と合致する場合,確定診断に近づくことになる.しかし,GHの血中濃度の判読は一般生化学検査の判読とは大きく異なる点がある.すなわち,GH分泌調節という視床下部を介したフィードバック・メカニズムの中で測定値を理解しなければならないという点である.ここではどのような場合GHを測定し,測定値をいかに評価すべきか,GHの調節機構からそのポイントを述べる.
異常値の出るメカニズムと臨床的意義
GHは下垂体から分泌される191個のアミノ酸からなる分子量22kDaのペプチドからなっている1).GHは視床下部からの放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone:GRHとsomatotropin release inhibiting hormone:SRIF)により調節を受けており,相互の働きによりGHの間挿的分泌や日内変動を形づくっている2).そして,GHそのものは肝臓でIGF-Ⅰ(insulin-like growth factorⅠ;somatomedine Cともいう)という成長因子の合成と分泌を促し,骨の成長を促す間接的な骨成長促進作用を担っている.さらにGHは代謝という面では直接的に働き,糖代謝,蛋白代謝に対して合成の方向に働いている.そして,GHは視床下部,さらには上位中枢から複雑な調節を受けている.GHは1日の分泌プロフィールとして入眠時に大きなピークを有する.またGHは血糖値とは逆相関するように動き,血糖値の上昇で抑制され,低血糖で分泌刺激を受ける.このようにGHの測定値を読む場合,上位中枢から視床下部,そして下垂体から肝でのIGF-Ⅰの合成と分泌といった調節系の中で読む必要がある.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.