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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
AST(aspartate aminotransferaseまたはGOT:glutamic-oxaloacetic transaminase)は心筋,肝,骨格筋,腎,赤血球などに含まれ,ALT(alanine aminotransferaseまたはGPT:glutamic-pyruvic transaminase)は肝,腎に多い.肝ではASTはALTの約3倍の含有量を示す.これらの組織細胞の傷害により血中に逸脱し,活性値は上昇する.腎組織に多量のaminotransferaseが存在するにもかかわらず,腎疾患での血中aminotransferase上昇は稀であるが,血中への逸脱より尿中への排泄が主となるためと考えられる.AST・ALTともに細胞内では細胞質の可溶性分画に存在する.さらにASTはミトコンドリアにも存在し,可溶性分画のASTはAST-s,ミトコンドリア内のASTはAST-mと呼ぶ.血清中に存在するASTのうちAST-sが主であれば,細胞の傷害は比較的軽度で,壊死に陥っている細胞は少ないが,AST-mの血中への逸脱は高度の細胞傷害・壊死あるいはミトコンドリア傷害が考えられる.肝小葉内ではASTは中心静脈周囲により多く局在している.各酵素の半減期はAST-s10~20時間,AST-m5~10時間,ALT40~50時間で,病態解析の際にはこれを考慮する必要がある.
AST・ALTともにビタミンB6の誘導体であるピリドキサル5′-リン酸(pyridoxal 5′-phosphate:PALP)を補酵素とし,細胞内ではPALPを結合した状態のホロ型酵素と,PALPを結合しない状態のアポ型酵素の両型が存在する.血清中にも両型が存在し,ホロ型酵素はそのままでも活性を示すが,アポ型は測定時にPALPを加えてホロ型に変換しないと活性を示さない.ホロ型が主であるが,総活性中に占めるアポ型活性の割合は病態により差がある.
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