特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
酵素および関連物質
乳酸脱水素酵素(LD)とそのアイソザイム
前川 真人
1
1浜松医科大学医学部臨床検査医学
pp.185-187
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101769
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LD)は解糖系最終段階の酵素で,ほとんどすべての細胞に存在する.H(B)とM(A)の2種のサブユニットからなる四量体であり,5種のアイソザイムを形成する.これらアイソザイムの割合は各細胞・組織で特異的なパターンを示す.細胞の可溶性分画に存在するため,細胞の傷害時に直接もしくはリンパを通って間接的に血管内に流入する,いわゆる逸脱酵素(releasing enzyme)である.したがって,大多数の細胞傷害で血清LD活性が上昇するため,非常に感度のよい,体内での異常の発信シグナルである.特に,数,大きさ,含量の多い細胞,組織の傷害の異常を優先的に反映する.血球細胞(溶血性貧血,白血球など),肝臓(急性肝炎など),骨格筋(筋ジストロフィー,多発性筋炎など),心筋(心筋梗塞など),腫瘍(悪性腫瘍)のほか,腎不全,間質性肺炎,自己免疫性疾患,ウイルス感染症などで上昇する.同じ由来ならば,傷害を受けた細胞数が多ければ多いほど,血清LD活性が高い.
赤血球中には血清中の200倍以上のLDが存在するため,溶血検体では血清LD活性が上昇するとともに,赤血球由来のアイソザイム1,2型が上昇するので注意する.過激な運動後はクレアチンキナーゼ(CK)の上昇が著しいが,骨格筋由来のLDも上昇する.検体採取後数日経過してから,LD高活性のためにアイソザイム分析を依頼することは,活性もアイソザイムパターンも本来のデータから変化している危険性が高いことから,奨励できない.
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