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膀胱癌は年々増加傾向にあり,泌尿器科領域では前立腺癌に次いで多い腫瘍である.組織型のほとんどは移行上皮癌であり,経腹壁的超音波検査でも,5mm程度の大きさであれば描出可能であるといわれている.ただし,腫瘍の局在が膀胱の前壁にある場合は,腹壁や消化管などの多重反射により描出が妨げられ,容易に見逃しうることは注意を要する.また,尿量が多すぎる場合には,膀胱後壁が焦点域から外れてしまうため,小さな病変の見落としにつながることも銘記すべきであろう.膀胱癌は超音波像にて,通常,円形ないし不整形の腫瘤として描出され,エコーレベルは膀胱壁に比して低エコーレベルに描出されることが多い.しかしながら,等輝度~高輝度に描出されるものもあり,エコーレベルのスペクトルはかなり広いものと考えられる(図1).腫瘤の表面が石灰化を伴う壊死組織により覆われていることも少なくない.予後診断においても,治療方針の決定においても最も重要なのは深達度であるが,経尿道的な超音波検査では,膀胱壁筋層が高輝度の層として描出されるため,同法を用いればT1(粘膜固有層浸潤)とT2(浅い筋層浸潤)の区別,およびT3b(膀胱周囲脂肪織浸潤)以上の診断は可能である.
膀胱癌と鑑別すべき疾患としては,慢性排尿障害に基づく肉柱形成,凝血塊,膀胱結石,前立腺肥大症,子宮筋腫,および膀胱三角部の隆起した尿管口などがある.カラードプラ検査では,膀胱癌はgradeが高くなるにつれて,むしろ乏血性に描出される(図2).腫瘍血流のドプラスペクトル解析では,gradeが進むにつれ,血流抵抗の指標であるPI値・RI値が上昇することが知られている.なお,carcinosarcomaやleiomyosarcomaにおける筆者の経験では,カラードプラ法にて腫瘤は富血性に描出され,ドプラスペクトル解析ではPI値・RI値の上昇が認められた.
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