今月の主題 腹部疾患をエコーで診る
臓器・疾患別アプローチ―ワンポイントレクチャー
〈肝(腫瘤性)〉
偽炎症性腫瘤
峯 佳毅
1
,
森 秀明
1
1杏林大学医学部第3内科
pp.212
発行日 2004年2月10日
Published Date 2004/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402100925
- 有料閲覧
- 文献概要
偽炎症性腫瘤(inflammatory pseudotumor:IPT)は炎症性非腫瘍性疾患で,近年,画像診断の進歩によりその報告例は増加している.原発臓器としては肺が最も多く,そのほか眼窩,胃,耳下腺など,さまざまな臓器にみられるが,肝に発生することは稀である.本症の原因としては,感染説,閉塞性静脈炎説,自己免疫説などの推測がなされているが,いまだ明確な結論は得られていない.病理組織学的には形質細胞,リンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤を伴う肉芽腫性の組織像を特徴とし,同じ炎症性結節でも肝膿瘍,結核,寄生虫などの疾患が特定できるものは本症から除外される.臨床症状としては発熱が最も多く,そのほか全身倦怠感,腹痛,体重減少などがみられる.本症は,経過観察にて自然縮小や消失がみられることも特徴の一つである.
血液検査所見としては,白血球増加,CRP高値などの炎症所見と軽度の肝障害を認めることが多いとされるが,無症状で検査所見に異常のみられない例も存在する.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.