シンポジウム 第17期日本学術会議環境保健学研連主催公開シンポジウム
「内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の影響はどこまでわかっているか」
人間への影響
米元 純三
1
1国立環境研究所地域環境研究グループ
pp.600-604
発行日 1999年8月15日
Published Date 1999/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902138
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私に与えられているテーマは,人間への影響ということであるが,初めに結論めいたことを言ってしまうと,人への健康影響は,はっきりわかっていないというのが現状ではないかと思う.しかし,この問題は生殖へ影響が及ぼされるということ,すなわち次世代,ひいては種の存続にも影響があるという問題であるから,疑わしきは罰せずではなくて,予防安全的な考えが必要となろう.
環境ホルモン問題は,環境中にあるホルモン様化学物質が野生生物に様々な生殖影響を及ぼしているということがあり,それらの生殖影響と化学物質の間にはなんらかの関連があるという状況証拠が様々あることが端緒になっている.そこで,この野生生物で見られている様々な生殖影響が人においても起こり得るのか,あるいは起こっているのか,また現在人においても指摘されている精子の減少とか,精巣腫瘍の増加,性ホルモンと関連があるがんの増加といった現象が,環境中のホルモン様化学物質との間になんらかの因果関係があるのかということがこの問題の最大の焦点ではないかと考える.しかし一つ非常に難しいことは,種々の疫学調査が行われているが,人はそれぞれ様々なライフスタイルを持っており,食物や生活習慣も違う.しかも種々の化学物質の複合曝露を受けているということで,この因果関係を明らかにすることは至難である.
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