特集 産業歯科保健
産業歯科保健の現状と展望
藤田 雄三
1
1(株)神戸製鋼所人事労政部歯科
pp.380-384
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902088
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産業における歯科保健の歴史
歯科保健は,かつては世間を騒がせたように小児,児童のう蝕対策が主要な問題点であったし,また近年では成人歯科保健として,またここ数年は老人歯科保健として注目されている.そのような中で産業人の歯科保健については見方によっては地味ではあるが,しかし着実にその役割を果たしてきた.歴史的には主として化学工業,金属加工業などでの歯牙酸蝕症への対応は特筆されるべきで,多くの優れた研究がなされたし,現場の実践活動でもそれに携わった歯科関係者の努力は忘れてはならないものと思われる.
近年に至り,今まで人々の努力の結果,作業環境は著しく改善され,従来の典型的な職業性疾病はほとんど見ることができなくなっている.労働安全衛生法第66条3項には歯科医師による有害業務の健康診断が記されており,その対象人数は多数にのぼると思われるが歯牙酸蝕症などの発生は極めて少ないといわれている.しかし稀ということが重要でないということではなく,工業的に基本的な化学物質である強酸類を取り扱う従事者の歯科健診は継続して実施する必要があるのはいうまでもない.
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