特集 地域保健と産業衛生
地域保健と産業保健の現状
高田 勗
1
1北里大学衛生/公衆衛生学
pp.144-147
発行日 1978年3月15日
Published Date 1978/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205568
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I.地域保健とその活動
近年,医療の概念は,包括的に深化,拡大してきている.すなわち,医療は医学を社会的に適用することであり,健康時の健康擁護を出発点として,健康破綻の予防,さらに疾病発生時の対策,健康破綻からの回復,リハビリテーションを包括し,母子保健,乳幼児の栄養,学校保健,産業保健,老人養護,生活環境の造成等,広範なものを含むとされている.この包括医療の考え方は,日本医師会から,「医療制度調査会答申」(昭和38年)および「医療総合対策」(同44年)によって明らかにされている.
包括医療は,人間と社会との接触面を包括するものであるが,この場合社会とは,第一次的には人間をとりまく生活環境,すなわち地域社会であろう.医療における地域概念の重要性は,医療需要の出会いが一定の地域に結びついて行われ,医療そのものが医師と患者が直接相対する人間的結びつきを基礎として行われる,という医療の本質からも確認され,包括医療が地域と密着して行われるべき理由が明らかとなる.つまり,包括医療はそれが展開される地域を基盤としており,地域医療という形で実践される.そこで,地域医療は地域における人々の生活を原点とし,個々の医師と人々との直接対応の場を主軸として,その人々の生活の場全体を健康たらしめる活動の一切として理解されなければならない(「日本医師会地域医療検討会答申」—昭和47年より).
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